健康被害に対する対応

まず、健康被害の訴えがあったら、すぐに使用・利用の中止を求めてください。
使用・利用を中止して、症状が改善するようであれば、商品が原因である可能性が高まります。

一方、原則、利用した時の体調や同時に摂取された食事とも関わりますので、商品との因果関係を明確にすることは、非常に難しいのが実際です。また、この判断は、医師が行うべきであり、販売会社が行うべきものではありません。
基本的に、まずは、医療機関の受診をオススメし、医師の判断を仰いでもらうようにしてください。

返品が目的の場合、健康被害が虚偽であり、多くは、連絡が途絶えます。

返金目的とした健康被害の訴え

特に、アフィリエイト広告などを使用している場合、返品を目的とした訴えも届いてしまう現状があるため、事実確認をしっかり行う必要があります。
見極めが非常に重要です。

なお、消費者には、利用方法(特に摂取量)が正しかったか?の聞き取りも行ってください。過去の事例では、30日分を1日で摂取されて健康被害が生じた事例もございます。
利用方法が間違っていた場合、商品の責任ではなく、消費者の責任になりますが、必ず正しい利用していただくよう注意喚起してください。

健康被害に対する管理体制

次に、医師の判断が商品によるものであった場合、原因究明を徹底して行う必要性が生じます。
もし、健康被害事例が複数件にわたるようであれば、商品供給の一時停止を検討する必要があります。

健康被害が起こった場合、被害を最小限に留めることが、企業としてのマストな責務です。

そして、原因究明を行う必要があるのですが、健康被害の原因には、様々な原因が考えられます。
健康被害の症状も加味して、以下のような想定外のトラブルの原因を想定し、検証していくことがオススメです。

想定外のトラブルの原因例
<製造サイドが原因>
・製剤における成分同士の反応(劣悪な保存環境による反応を含む)
・商品製造時の異物混入(人為的・偶発的)
・使用した原料の製造時における異物混入(アレルゲン物質の混入など)
・製剤や原料の製造工場におけるライン汚染
<消費者サイドが原因>
・医薬品との併用
・過剰摂取
・疾患者(胃腸障害の持病など)の利用
・原材料表示(アレルギー表示)の見落とし
・不調時の利用や食べ合わせ(他社商品を含む)


文献調査や過去事例の調査なども行い、考えられる原因をチェックしていく必要があります。場合によっては、何らかの分析・試験なども実施すべきです。
そして、流通実績、商品製造ならびに各原料の管理体制なども加味し、原因を総合的に判断していく必要がございます。

米国で起こったトリプトファン事件などが健康食品サプリメントの大きな健康被害事件として有名ですが、誰も想定できなかったようなトラブルが原因となっています。
例えば、大手企業の原料だから問題が起こるはずないというような固定概念を捨てて原因究明にあたる必要があります。

健康被害は、商品ではなく、消費者サイドに原因があることもございます。
消費者サイドの原因は、原則、原因究明のためのインタビューによって、原因を明確にする必要があります。リスクマネージメントの上でも、健康被害の問い合わせ対応マニュアルに、必ず原因究明のためのインタビュー内容を組み込んでおく必要があります。

最後に、健康被害は、非常に稀なケースでしか起こりませんが、原則、企業のリスクマネージメントとして、起こり得るものとして備えておく必要があります。

健康被害が起こった場合、必ず対応フローを明確にしておく必要があります。この供給の停止条件に関しては、事前に、健康被害数を設定しておくことが好ましいです。
理由として、健康被害事例が生じ、商品供給の一時停止が求められた際、必ず金銭的なダメージも生じるため、営業面からなかなか供給停止に踏み切れない事象が生じるからです。原則、この危機管理は、経営責任の部分であり、営業面を排除して、条件設定を行うべきなのです。

大手企業の商品で複数件の健康被害が生じた場合、第三者委員会を設置して、対応を行うことまで対応フローに組み込まれるでしょう。

機能性表示食品の場合、健康被害情報の収集・評価・報告がガイドラインに示されているので、必ず対応フローに組み込む必要があります。
行政への報告を怠った場合、責任は、非常に重くなります。

なお、供給先からのペナルティーを恐れて供給停止に踏み切れない事象も想定されますが、対応が遅れたことによるダメージ(被害者への損害倍書や企業としての信頼損失など)に比べると、ペナルティーによるダメージの方が小さいと考えられます。また、健康被害に対する対応(予備的な対応)にペナルティーが科される点については、弁護士を交えて、供給先と妥当性を協議すべきでしょう。

責任問題と後処理

原因究明が行われ、原因が明確になった場合、各社の責任も明確になってくるでしょう。

各社の責任に応じて、生じた損失の負担や処理の問題を協議する必要が出てきます。基本的に、各社では、リスクマネージメントとして、PL保険(生産物賠償責任保険)に加入していることが想定され、一部の損害を保険で処理するケースもあるでしょう。

責任の所在が原料であった場合でも、販売者の対応に問題があったら、その対応の問題でも責任が問われ、損害を負担する必要性が生じてくるでしょう。
何れにしても、弁護士を入れた協議になりますので、弁護士にご相談ください。

なお、原因が消費者にある場合は、原則、お客様の責任になるため、製造サイドや販売者は、損害等が発生しないでしょう。
対応マニュアルで、処理方法を事前に決めておき、丁寧に説明するなどして処理することになるでしょう。

健康食品サプリメント製造FAQに戻る