ビスグリシン酸鉄キレート

Ferrochelなどのビスグリシン酸鉄キレートは、米国などで使用されているキレート鉄素材です。日本では、指定外添加物に区分され、使用できません。

そのビスグリシン酸鉄キレートは、鉄をアミノ酸であるグリシンに結合させたキレート鉄であり、鉄の体内への吸収率が高いのが特徴です。DMT1(金属イオントランポーター)ではなく、アミノ酸トランスポーター(LAT)によって吸収されることがわかっています。また、吸収性が高いことが特徴であるヘム鉄やフェリチン鉄に比べて、非常に安価です。

近年、iHerbなどで容易に個人輸入が可能になったため、日本でもアミノ酸キレート鉄での健康被害が生じています。

海外鉄サプリによる健康被害への見解

そして、上記健康被害事例を報告した論文が以下のものだと思われます。

鉄過剰症事例報告:
Secondary Iron Overload Due to Amino Acid Chelated Iron Supplementation: A Case Report Involving a Mother and Daughter. Cureus 2025;17(1): e77251.

アミノ酸キレート鉄補給による二次的鉄過剰症:母と娘の症例報告
要旨(Google翻訳)
アミノ酸キレート鉄(ビスグリシンキレート鉄、Ferrochel)は、鉄欠乏性貧血の予防および治療を目的とした食品強化剤として開発され、使用されている。しかし、その長期使用については報告されておらず、鉄過剰症の報告もない。我々は、採血により鉄過剰症と診断された母娘の症例を報告する。血清分析により、フェリチン値の上昇およびトランスフェリン飽和度(TSAT)の上昇が明らかになった。娘のMRIでは、肝臓、脾臓および骨髄に鉄蓄積が認められたが、炎症反応は正常で、膠原病または腫瘍を示唆する所見は認められなかったため、アミノ酸キレート鉄製剤の経口投与により二次性鉄過剰症と診断された。市販薬の服用を中止し、瀉血を約2年間行った後、両女性の血液学的プロファイルは改善傾向を示した。アミノ酸キレート鉄サプリメントは吐き気などの副作用もなく容易に服用できますが、1年以上服用する場合はフェリチン値の検査が必要です。無症状の患者でも鉄過剰症を発症する可能性があり、放置すると非常に危険な状態となる可能性があります。したがって、アミノ酸キレート鉄はサプリメントではなく医薬品として扱うべきであり、このような場合には迅速な対応が必要です。本報告書は、市販のアミノ酸キレート鉄サプリメントの慎重な服薬レビューの重要性を強調しています。


参考:アミノ酸キレート鉄(フェロケルなど)の危険性について(一般社団法人オーソモレキュラー栄養医学研究所)

通常、鉄は、吸収の安全弁として、鉄が充足していれば、鉄の吸収を抑制する役割を担うホルモン:ヘプシジンが分泌され、過剰に吸収されなくなっています。

上記論文では、アミノ酸キレート鉄の吸収は貯蔵鉄量によって調節されており、これらの場合には鉄過剰症は起こらないと推測されていましたが、実際、アミノ酸キレート鉄は鉄の過剰症が確認されており、長期的な摂取によって鉄アミノ酸キレート製剤は鉄過剰症を引き起こす可能性があると報告しています。

上記論文でも記述されている通り、アミノ酸キレート鉄はサプリメントではなく医薬品として扱うべきであり、安易に個人輸入で購入して利用すべきではございません。健康被害が生じても、自己責任です。いくら安価であっても、注意して利用する必要があるのです。