鉄の吸収と鉄不足判定

まめ鉄の大豆由来フェリチン鉄は、2022年夏以降、貯蔵鉄として人気の鉄素材となってきました。

鉄という栄養素については、摂取する鉄素材や利用者の鉄欠乏度によって吸収が異なる特徴があります。

鉄の吸収

一般的に、ヘム鉄は、非ヘム鉄より吸収が良いと言われていますが、それは、食事で摂取した場合の条件です。

食事で摂取される非ヘム鉄である3価の鉄(主に野菜などの鉄)は、吸収できる2価の鉄の形になるため、ビタミンCなどの還元剤が必要となります。そして、全ての非ヘム鉄が吸収できる2価鉄に変換される訳ではないため、食品での非ヘム鉄は、2価の鉄でもある非ヘム鉄より吸収が悪いとされています。

一方、非ヘム鉄でも、鉄剤(硫酸鉄、クエン酸鉄など)のように、吸収が可能な2価の鉄素材も存在し、こういった鉄素材は、必ずしも吸収が悪いとは言えません。鉄の欠乏時は、ヘム鉄とクエン酸鉄の吸収に大差がないという報告も複数されています。

また、タンパクに包まれたフェリチン鉄も、例外的な非ヘム鉄の1つです。
豆由来のフェリチン鉄は、エンドサイトーシスと呼ばれる特別な吸収機構で吸収が行われるため、2価鉄への還元が行われることなく、高分子のまま吸収が行われます。

このフェリチン鉄は、医療用医薬品に用いられる硫酸鉄との比較試験が行われており、この両者の吸収率と生物学利用能は同様であったと報告されています。米国基準では、この報告を用いて、フェリチン鉄の吸収が良いと謳われています。
実際、フェリチン鉄の吸収率は、22~30%と報告があり、一般的に非ヘム鉄の吸収と言われている2~5(10)%に比べて高いこともわかります。

ちなみに、フェリチン鉄は、他の2価鉄と異なり、DMT1における他ミネラルとの拮抗も起こらないと予測され、他のミネラルの吸収を妨げにくいという特徴も有しています。

なお、フェリチン鉄はヘム鉄と同じく吸収が良いクリエイティブも見受けられますが、そのクリエイティブは、別々の文献でヘム鉄とフェリチン鉄の吸収率を比較して表現されていることが多く※、同条件で両者が比較されている訳ではございません。
特に、ヘム鉄は、製法によって吸収率が異なるという論文も存在するため、フェリチン鉄とヘム鉄の吸収率を正確に比較することは難しいと思われます。
※フェリチン鉄の文献は、本ページの文献などを引用できると思われますが、弊社からヘム鉄の文献は提供しておりません。

引用文献
日本人の食事摂取基準(2020年版)
清涼飲料水評価書:鉄 食品安全委員会 2017年
兵庫県立大学 他:貧血予防に新たな指針 ~ ビタミンCが鉄分の吸収を促進するメカニズムを原子レベルで解明 ~
San Martin CD, Garri C, Pizarro F, Walter T, Theil EC, Núñez MT. Caco-2 Intestinal Epithelial Cells Absorb Soybean Ferritin by μ2 (AP2)-Dependent Endocytosis. J Nutr. 2008; 138(4): 659–666.
Bo Lönnerdal, Annika Bryant, Xiaofeng Liu, Elizabeth C Theil. Iron absorption from soybean ferritin in nonanemic women. Am J Clin Nutr. 2006;83(1):103-7.
Davila-Hicks P, Theil EC, Lönnerdal B. Iron in ferritin or in salts (ferrous sulfate) is equally bioavailable in nonanemic women. Am J Clin Nutr. 2004; 80(4):936-40.

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理想的な鉄素材


鉄は、フリーラジカルを発生することで生じる害(老化や疾患の原因)があり、鉄の摂取を嫌うアンチエイジング医師なども存在します。実際、テロメア(遺伝子の寿命ロウソク)と血中の鉄濃度の関係を調べた調査では、その両者は比例していたという結果も報告されています。

鉄は、吸収が良いことも重要なのですが、過剰になりにくい要素も重要なのです。鉄の吸収は、体が不足していれば高まります。
海外で流通している吸収の良い鉄素材の中は、安全面から日本では認可されていない素材も複数存在します。注意が必要です。

ちなみに、大腸炎等で鉄が吸収できない人は、どんなに多くの鉄を摂取しても鉄不足が回復しにくいです。鉄の摂取以外の方法をアプローチする必要があります。

また、他の成分と反応しにくいことも重要です。反応性が高くラジカルを発生しやすい鉄素材は、胸焼け等の副作用も起こりやすいです。お茶や野菜・果物のタンニンと反応して、鉄が吸収できない形に変化することもございます。

理想は、他の成分と反応しにくく、適度に吸収が良く、かつラジカルを発生しにくい安全な鉄であることなのです。

そして、フェリチン鉄は、タンパクに包まれたまま吸収されるという点で、他の成分との反応性が低く、フリーラジカルが発生しにくい鉄であると考えられています。そのため、モニター試験やヒト臨床試験等でも、胸焼け等の事例が非常に少なく、腸管までの吸収の過程で、優しい鉄であることまではわかっています。

一方、腸管に入ってからのラジカル産生の有無などが明確になっていないため、腸管吸収後の詳しい体内動態の解明などが求められています。

また、近年、まめ鉄は、90日間の反復毒性試験(ラット)なども実施され、1950mg/kg/dayで安全性も確認されています。今後、更なる安全性評価が行われていくことが期待されます。

引用文献
高後 裕, 大竹 孝明:鉄代謝の生体に及ぼす影響 外科と代謝・栄養 2015; 49(2) 59-65.
大竹 孝明, 生田 克哉, 高後 裕:鉄と発癌 日本内科学会雑誌 2010; 99(6) 1277-1281.

鉄不足の判定

一般的に、医療機関では、ヘモグロビンの値が成人男性で13g/dL未満、成人女性で12g/dL未満、80歳以上の場合で11g/dL未満だと貧血と診断されます。
また、さらに、血清フェリチンが15mg/ml以下だと「かくれ貧血(潜在性鉄欠乏」と診断されます。

アスリートに関しては、明確な基準はないのだが、フェリチンに関しては、Gundersen ら(1992年)の高地トレーニング前の基準値である男性選手 30 ng/ml、女性選手20 ng/ml を用いられることが多いです。また、ヘモグロビンの基準値も、女性は成人女性の12g/dLを用いられるが、男性は不明瞭であり、国立スポーツ科学センターでは14g/dLを用いています。

スポーツの中でも、長距離の陸上、剣道や空手、サッカー、バレーボール、バスケットボールなど、何度も足裏を強く打ち付ける競技は、運動性の溶血性貧血を引き起こし、貧血状態になりやすいことも知られています。

近年、かくれ貧血が問題となり、血清フェリチンの値も重要視されるようになっています。この血清フェリチンは、鉄剤を用いた治療でも回復までに3~4ヶ月の期間を要するとされており、サプリメントなどを用いて試みる場合、国民栄養調査と栄養摂取基準から導かれている不足分4.1mg/日以上の摂取が好ましいです。

一方、我々の豆由来フェリチン鉄を用いたヒト臨床試験では、1日あたり鉄5mgの摂取では、月経によりヘモグロビン値が低下している被験者に対しての回復は乏しく、1日あたり鉄10mgでの摂取において、ヘモグロビン値やフェリチン値の回復が認められています。
また、日本における鉄の摂取基準(成人女性、推奨量10.5mg/日)は、欧米(成人女性、推奨量18mg/日)の半分であることなども加味すると、鉄欠乏の症状がある成人女性は、1日あたり鉄10mg以上の摂取が好ましいと考えられます。

二次性貧血

鉄の摂取が足りていないために起こっている貧血を一次性貧血と言います。そして、それ以外の要因で貧血になっているものを二次性貧血と言います。

二次性貧血などの貧血の種類については、MCVやMCHCなどの値からも推測することが可能です。

MCV高値・正常
・ビタミン欠乏性貧血
・葉酸欠乏性貧血
・過剰飲酒

MCV正常・MCHC正常でも貧血の場合
・再生不良性貧血
・腎性貧血
・溶血性貧血(スポーツ貧血の主な原因)
・急性出血

MCV低値・MCHC低値
・鉄欠乏性貧血(一次性貧血)
・慢性炎症(慢性的な大腸炎等を含む)
・鉄芽球性貧血 等

そのため、貧血の評価を目的に血液検査を行った際、ヘモグロビン値(Hb)・ヘマトクリット値(Ht)・赤血球数(RBC)より、平均赤血球容積 MCV(Ht/RBC、基準値85~102fL)、平均赤血球ヘモグロビン量 MCH(Hb/RBC、基準値28~34pg)、平均赤血球ヘモグロビン濃度 MCHC(Hb/Ht、基準値30.2~35.1%)を算出いたします。

商品設計を行う場合、一次性貧血に限らず、一部の二次性貧血へのアプローチも加味した方が有効性の高い商品に仕上げることができます。葉酸やビタミンB12 を配合して巨赤芽球性貧血を予防したり、プレバイテオティクス(食物繊維)やプロバイオティクスの要素を加えて鉄が吸収できる腸内環境作りを演出することも大事なのです。

引用文献
岡田 定:II.鉄欠乏 5.鉄欠乏性貧血の治療指針 日本内科学会雑誌 2010;99(6) 1220-1225.
石田浩之:スポーツと貧血 日本医事新報 2013;(4656) 29-33.
Gundersen S, Alexander J, Hochstein C, Lomos A, Levine BD. Failure of red cell volume to increase to altitude exposure in iron deficient runners. Med Sci Sports Exerc 1992;24(5): S90.
蒲原一之:アスリート貧血 日本臨牀 2017;75 (増刊号1):146-150.
Ryuji Takeda, Yuji Kuriyama, Yasushi Yoshida. Restorative effect of bean ferritin iron on low hemoglobin level in Premenopausal Women with Menstruation-Induced Anemia: A randomized, double-blind placebo-controlled intergroup trial Functional foods in health and disease (in press).


記事筆者

株式会社アンチエイジング・プロ 常務取締役 COO
SloIron Inc. 取締役(Stockholder)、順天堂大学医学部 総合診療科 研究員

広告にも精通し、日々、売れる商品(;顧客の成功)のことを考え、健康食品サプリメントの機能性原料開発やOME製造を行っています。…もっと詳しく