フェリチン鉄とは

フェリチン鉄とは、肝臓や脾臓で貯えられている貯蔵鉄です。第2の鉄とも呼ばれます。
※フェリチン鉄は、アポフェリチンと区別するため、鉄を含有したフェリチンをフェリチン鉄としています。

そのフェリチン鉄は、たんぱく内包型の鉄であり、右イラストのようにフェリチンという水溶性たんぱく質が複数の鉄(生体鉄 Fe2O3H2O)を包んでいます。

鉄が必要な時に、鉄をリリースし、ヘモグロビンに鉄を供給します。そして、鉄が酸素と結合して体中に酸素を運びます。

1990年代、こういった貯蔵鉄が大豆に含まれることが発見され、その吸収機構や生物学的利用能など、新たな鉄栄養素として多くの研究がカリフォルニア大学エリザベス・タイル教授らのグループが中心になって行われてきました。

Ferritin-iron is released during boiling and in vitro gastric digestion. J Nutr. 2008;138(5):878-84.
代謝のキープレイヤー・フェリチンの鉄給源としての可能性についてフェリチン鉄は「第三」の栄養鉄形態か? 化学と生物 2017; 55(8): 514-517.

鉄の吸収機構

鉄素材による吸収の差は、各鉄の吸収機構の違いに起因します。無機鉄は、 Dcytb(Duodenal cytochrome B、還元物質)によって3価鉄イオン(Fe3+)から2価鉄イオン(Fe2+)に還元されてからDMT1(Divalent Metal Transporter 1、金属イオンのトランスポーター)によって腸管上皮細胞内へ取り込まれます。なお、銅、亜鉛やマンガンなども、DMT1によって取り込まれます。取り込まれたFe2+は、(ヘプシジンにより制御された)フェロポーチンの働きにより門脈側に移出され、鉄酸化酵素(ヘファスチン)によってFe3+に酸化される。血液側に移行 した鉄は、トランスフェリンに結合してトランスフェリン結合鉄(血清鉄)と して全身に運ばれます。また、余剰な鉄は、貯蔵タンパクであるフェリチンに内包されて貯蔵されます。多くの血清鉄は、骨髄において、赤芽球に取り込まれて赤血球の産生に利用されます。

ヘム鉄は、HCP1(Heme carrier protein 1)という特別な輸送体によって、そのまま腸管上皮細胞内へ取り込まれるとされていたが、現在、吸収機構は未だ混沌としています。何らかの輸送体で腸管上皮細胞内へ取り込まれ、細胞内でヘムオキシゲナーゼにより2価鉄イオン (Fe2+)とポルフィリンに分解される。Fe2+になってからは、無機鉄と同様な代謝が行われます。

一方、フェリチン鉄(ならびにフェリチン内のナノFe(Ⅲ))は、エンドサイトーシスによって腸管上皮細胞内へ取り込まれます。その後、代謝して赤血球に用いられることまでは明らかになっていますが、その代謝機構に関しては、明らかになっていません。

なお、過剰な鉄は腸管上皮細胞内 にフェリチンとして貯蔵され、腸管上皮細胞の剥離に伴って消化管内に排泄されます。

大豆フェリチン鉄の吸収機構


フェリチン鉄は、エンドサイトーシス(左図:イメージ)という特別な吸収機構で高分子のまま吸収されます。無機鉄などと異なり、2価の鉄に還元されてから吸収される必要がありません。
鉄イオンになってから吸収されないため、鉄イオン特有のフリーラジカルも生じさせないで吸収できることが最大の特徴です。

鉄によるフリーラジカルの害(便秘や胸焼けなど)を受けやすく、鉄不足に陥りやすい女性のための「優しい鉄素材」です。

Caco-2 Intestinal Epithelial Cells Absorb Soybean Ferritin by μ2 (AP2)-Dependent Endocytosis. J Nutr. 2008; 138(4): 659–6.

吸収の良い非ヘム鉄:フェリチン鉄

現在、多くの方は「ヘム鉄は吸収が良い」「非ヘム鉄は吸収が悪い」という認識を持っていると思います。
その常識を覆したのがフェリチン鉄でもあります。

フェリチン鉄は、ヘム鉄と同様、生体に存在する生体鉄です。一方、ヘム鉄とは異なるため、非ヘム鉄に分類されます。
非ヘム鉄であるフェリチン鉄の吸収は良くないのでしょうか?

答え:悪くありません。

ヘム鉄と同じくらいの吸収が示されている報告が存在します。フェリチン鉄は、ヘム鉄と同様、生体鉄でもあるので、体が利用しやすいのだろうと考えられています。実際に、フェリチン鉄は、ヒトでの臨床試験も複数実施されており、優れた吸収性が示されています。そのため、ヘム鉄・非ヘム鉄のどちらにも分類されない第三の鉄素材として注目が高まりつつあるのです。

ちなみに、フェリチンはフェリチンというたんぱく質に内包された鉄、ヘム鉄はポルフィリン環の中に入った鉄です。そして、フェリチンの中に内包された生体鉄(Fe2O3H2O)は高分子であり、ポルフィリン環の中の鉄は鉄原子です。そのため、フェリチン鉄は約20万Daと高分子ですが、ヘム鉄は600前後と低分子です。

基本、鉄は、たんぱく質と一緒に摂取すると吸収が高まるとされています。それは、たんぱく質が消化管内で2価の形に保持しやすいためです。フェリチン鉄も、ヘム鉄も、たんぱく質によって2価の状態を保持しなくても吸収がなされるため、吸収率が高いのでしょう。

Iron absorption from soybean ferritin in nonanemic women. Am J Clin Nutr. 2006;83(1):103-7.
Absorption of iron from ferritin is independent of heme iron and ferrous salts in women and rat intestinal segments. J Nutr. 2012;142(3):478-83.

2022年夏 NHK砲でブレイク

2022年7月8月、NHKで貯蔵鉄(フェリチン)や隠れ貧血をテーマに複数回の番組放映が行われました。

それら番組では、日本人女性の多くが平均4mgの鉄が不足しており、隠れ貧血(ヘモグロビンは高くても、フェリチンが低い)の女性も多いと紹介されました。そして、1日4mgを目安に、今まで以上に鉄を補う意識が必要であると提言されました。

その影響で、鉄を補うニーズが一気に高まると共に、ヒトの貯蔵鉄:フェリチン鉄と同じ形をした豆由来のフェリチン鉄へのニーズも一気に高まりました。
弊社も、まめ鉄のOEM顧客の売上が2~3倍に跳ね上がり、原料製品:まめ鉄の欠品を起こしてしまいました。

その後、ますます既存顧客の売上が伸び、同時に、OEM案件に限らず原料案件でも数多くの新規案件が届いております。

弊社原料製品:まめ鉄 SloIron

まめ鉄は、子供や高齢者が摂取しやすいをコンセプトに、カリフォルニア大学バークレー校で開発された世界初の大豆由来のフェリチン鉄素材です。
弊社は、アジア地域総代理店として、日本で唯一、原料を取り扱っております。
なお、現在は、OEMに限らず、原料でも供給させていただいております。

まめ鉄/SloIronとは?

表示上の注意点!


まめ鉄の鉄は、タンパク質(アポフェリチン)を含んだフェリチン鉄の含有量も定量され、試験成績書で参考値として示されています。
一方、そのフェリチン鉄量は、豆の品種に限らず、収穫時期や収穫地でも微妙にブレが生じます。そのため、本原料では、規格化が行われておりません。

なお、鉄の総量とフェリチン鉄の量を比較して示した場合、景品表示法の優良誤認として行政指導を受けてしまう可能性が高いです。まめ鉄内のフェリチン鉄は、鉄を包んでいるタンパク質もフェリチン鉄量に加わるため、必然的に鉄総量の2~3倍の量が示され、鉄が多く含まれるように誤認させてしまうためです。
そのため、弊社は、原則、フェリチン鉄としての含有量表示をNGとしており、広告表現であってもフェリチン鉄の含有量を行わないようにお願いしております。


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記事筆者

株式会社アンチエイジング・プロ 常務取締役 COO
SloIron Inc. 取締役(Stockholder)、順天堂大学医学部 総合診療科 研究員

広告にも精通し、日々、売れる商品(;顧客の成功)のことを考え、健康食品サプリメントの機能性原料開発やOME製造を行っています。…もっと詳しく