軟骨由来プロテオグリカンの定義
プロテオグリカンは、現在、人気の美容健康素材となっている。最も多く流通するのは、鮭鼻軟骨由来の抽出物です。
一方、プロテオグリカンを偽る原料も多く存在いたします。それは、プロテオグリカンは、高い分子量を維持するため、非加熱で高レベルな抽出が求められるので、どうしても高単価な原料になってしまう背景も影響しています。
代表的な偽プロテオグリカンは、コンドロイチン硫酸塩そのものである低分子の原料です。
実際に、リナイス社の調査分析でも、ほとんどが分子量20万以下の成分であり、ほとんどがコンドロイチン硫酸である原料の存在も明らかになっています。
コンドロイチン硫酸はプロテオグリカンの構成成分ですが、プロテオグリカン=コンドロイチン硫酸塩では、決してございません。
例えば、プロテオグリカンなどの糖鎖を多く研究している日本応用糖質科学会では「軟骨に多く分布するプロテオグリカン、すなわち、アグリカンです。」と紹介しており、軟骨由来のプロテオグリカンはアグリカンと定義付けています。
アグリカンは、コンドロイチン硫酸やケラタン硫酸などのグリコサミノグリカン鎖をコアタンパクに数多く結合した複合糖質です。
日本応用糖質科学会でも、弊社が以下のイラストで表しているように、試験管ブラシのような形と称しています。
そして、東京理科大学薬学部の東恭平准教授、理化学研究所環境資源科学研究センターの堂前直ユニットリーダー鈴木健裕専任技師らの研究グループは、10種類の食用硬骨魚類の頭部軟骨からプロテオグリカンを抽出し、そのコンドロイチン硫酸構造を解析を行っていたりします。
弊社では、分子量40~150万Daの分子量で、コアタンパクを有するアグリカンを鮭鼻軟骨由来プロテオグリカンの定義と考えております。
軟骨素材でプロテオグリカンであることを証明するには、手間がかかるコンドロイチン硫酸構造解析を行うのも一手ですが、HPLCでGPCカラムを用いて、左図のような分子量分布の波形を示すことが最も確実です。
低分子の素材は、高分子のプロテオグリカンピールよりかなり後にピークが示されます。左図のHPLC条件であれば、約25分前後のリテンションタイムでピークが示されます。プロテオグリカンにとって、左図で示されるような分子量は、非常に重要なのです。
なお、グリコサミノグリカンであるコンドロイチン硫酸などの分子量は、数万Da程度です。
我々の鮭鼻軟骨由来プロテオグリカン研究では、N末端等が欠損したプロテオグリカン原料(分子量42万Da程度)、アグリカンの状態のプロテオグリカン(分子量90~150万Da、ピークトップ120万Da)、2~3つのアグリカンがヒアルロン酸で結合された非変性プロテオグリカン(生軟骨での状態)という、3つのプロテオグリカン原料が存在が確認されております。
また、プロテオグリカン原料として販売されていても、実は、プロテオグリカンとは言えない低分子の原料の存在も確認できております。
偽プロテオグリカン原料が流通する理由
偽プロテオグリカン原料の多くは、コンドロイチン硫酸塩です。
このようなコンドロイチン硫酸がプロテオグリカンとして流通する大きな理由は、プロテオグリカンの定量分析において、ムコ多糖に含まれるウロン酸を定量するカルバゾール硫酸法が用いられてきたためです。
このカルバゾール硫酸法では、分子量に関係なく、コンドロイチン硫酸でも、プロテオグリカンと同様なムコ多糖量が検出されしまいます。
基本的に、機能性表示食品の定量分析でも利用されているHPLC法で定量分析を実施するべきです。また、その際のピーク面積を測定する際のリテンションタイム域も、低分子領域が入らないように設定する必要があります。
もしくは、HPLC法で定性分析として分子量を確認した上で、迅速な簡易定量法としてカルバゾール硫酸法(ガランボス法)を併用すべきなのです。
実際、我々の調査研究では、低分子領域のコンドロイチン硫酸も含めて、プロテオグリカン量として算出されている原料も存在します。多めのプロテオグリカン量が示されます。本来、正しく90~150万Da領域のピークだけを用いるべきなのです。
プロテオグリカンの作用機序は、主にC末端に存在する抗原部位による免疫寛容であると考えられております。コンドロイチン硫酸では、抗原部位が存在しない可能性も高く、プロテオグリカンで示されるような免疫寛容も期待できません。
そのため、コンドロイチン硫酸の原料は、プロテオグリカンと称せず、コンドロイチン硫酸として販売されていくべきなのです。弊社では、、もう少しプロテオグリカンの定期を明確化し、コンドロイチン硫酸の低分子の偽プロテオグリカン原料は市場から排除していくべきだと考えております。