5-デアザフラビン
5-デアザフラビン(5-Deazaflavins)は、ビタミンB2のリボフラビンによく似た構造を持ち、サーチュイン(長寿遺伝子)を活性化させる補酵素として注目が高まっているNAD+の様物質です。
※NAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド):ミトコンドリアでのエネルギー産生反応の補因子の1つ。NMNは、NAD+の前駆体。
5-デアザとは5番目の窒素を炭素に置き換えてアザ基を取り除いたものを意味します。
5-デアザフラビンとは、フラビンにおけるイソアロキサジン環の5位の窒素を炭素に置き換えてアザ基を取り除いたものを指す総称です。
複数の5-デアザフラビンが存在し、近年は、機能性を高めた誘導体も出てきています。一方、どの5-デアザフラビンも一緒くたに5-デアザフラビンと原材料表記がされている現状があります。既存で最も露出が大きい5-デアザフラビンは、TND1128(CAS:59997-14-7)という5-デアザフラビン(正確には5-デアザフラビン誘導体)であろうと推測されます。
詳細については、5-デアザフラビンの定義と共に、代表的な5-デアザフラビンの構造式を示した以下の資料をご参照くださいませ。
上記の資料では、リボフラビンや5-デアザリボフラビンの構造も示しています。違いは、5位が窒素か炭素かの違いだけなのがわかります。
5-デアザフラビンの機能性・安全性
笠井の報告(1998年)において、5-デアザフラビンは、構造式はビタミンB2骨格でありながら、実際の機能はビタミンB3骨格系統のNAD+やNADP+と同じと考えるのが妥当でであると述べられています。
一方、5-デアザフラビンの有効性データは少なく、未だヒトにおけるヒト臨床試験データなどは報告されていません。
また、様々な5-デアザフラビンで機能性の研究が進められているが、試験管試験や動物試験が中心となっている。近年、5-デアザフラビン誘導体であるTND1128が注目され、ミトコンドリア活性作用などが注目されています。
なお、市場で行われているNMNの40倍というクリエイティブ表現も、TND1128とNMNにおける比較試験結果に基づくものと推測され、全ての5-デアザフラビンでは謳える表現ではないと考えられる。
機能性の検証が行われている5-デアザフラビンは、TND1128とF420(メタン発酵の酸化還元反応に関わる補酵素)だけであり、他の5-デアザフラビンは、弊社の文献調査において、機能性の報告も行われていません。
次に、どの5-デアザフラビンに関しても、弊社の文献調査の範囲内で安全性のデータは、確認されません。安全性データについては、TND1128で社内データとして存在するようですが、その他の5-デアザフラビンでは、現時点において、存在しません。(2023年7月25日修正)
また、5-デアザフラビンは、食薬区分において非医薬品リストに載っておりません。TND1128も審議対象にはなっておりますが、判断されていません。現時点において、製造に合成工程があることなどから、未承認添加物に該当する可能性もございます。安全性データがない点や市場での流通実績の少ない点を加味すると、おそらく、非医薬品リストに掲載されるのは、かなり先だと予測されます。
ちなみに、仮にTND1128が非医薬品リストに収載された場合、他の5-デアザフラビンも同時に、非医薬品扱いになる訳ではございません。その点は、注意が必要です。
ご支給ならびに供給について
要望が多いため、弊社でも、OEM向け限定で5-デアザフラビンを調達しております。原料をご支給いただく際も含め、5-デアザフラビンを配当したサプリメントに関しては、食薬区分の観点から、お客さま責任(承諾書のご提出が必須)で流通していただくことになります。
※原料販売は行っておらず、OEM限定の供給とさせていただいております。また、仕入れ先の情報提供(秘密保持契約の関係上)も提供しておりません。 ※弊社は、仕入れ原料として取り扱っているだけで、原料の輸入販売は行っておりません。
ご理解の程、何卒よろしくお願い申し上げます。
なお、弊社において、CAS:26908-38-3の取り扱いは、行っておりません。
弊社では、CAS:59997-14-7の取り扱いも開始いたしました(OEMのみ)。
(赤字部分を2023年9月22日修正)
なお、TND1128という名称に関しては、引用文献から引用して(10-ethyl-3-methylpyrimido[4,5-b]quinoline-2,4(3H,10H)-dioneの通称名として)利用しております。現在、商標が出願されておりますが、弊社の見解として、2021年Katsurabayashiらの論文でTND1128という名称が記述されて公知になって、数多くのサイトでTND1128が利用されております。そのため、商標は、CAS:59997-14の5-デアザフラビンに限定しても取得できないものと考えております。
一方、仮に取得され場合、TND1128の表現を見直し、CAS:59997-14の表現をメインに利用していく予定です。
確認分析と商品での含有量分析
5-デアザフラビンの原料は、非常に高価な原料であり、現在のように定量分析が容易にできない状況では、どうしても偽物が出回りやすくなります。
弊社では、NMNが日本に上陸していち早く対応した時のように、第三者分析機関での定量分析を可能にすべく、試行錯誤を行っておりました。
一方、5-デアザフラビン(CAS:59997-14-7)は、標準試薬が一般流通しておらず、分析を確立するのに困難を極めておりました。
現在、HNMRとCNMR、LC-MSで定性・定量分析が第三者機関で実施された5-デアザフラビン(CAS:59997-14-7)の標準試薬が入手できております。
そして、厚生労働省登録分析機関と5-デアザフラビンの分析(HPLCもしくはLC-MS)を進めており、8月上旬には、分析結果が届く予定です。
ちなみに、弊社では、試薬なしでNMRを用いて5-デアザフラビン骨格部分の定量分析も実施しております。検体は、5-デアザフラビンの誘導体であり5-デアザフラビン骨格を持っているCAS:59997-14-7の5-デアザフラビンを配当した商品であり、配合量や化学式から推測した理論値が検出されています。
5-デアザフラビンを含む化合物であることは、分析で示されております。
ただし、水分含有量やカプセルの充填誤差の影響より、±10%程度の誤差が生じるだろうと予測されます。そのため、先述のHPLCもしくはLC-MSによる分析を確立する必要があるのです。
なお、分析が確立された場合、分析だけのご依頼をいただいても対応する予定はございません。
5-デアザフラビン(CAS:59997-14-7)であることが明らかになっている原料を用いた弊社OEM製造商品のみでの実施させていただく予定です。
5-デアザフラビンの表記と表現
現在、市場で主に流通している5-デアザフラビンは、CAS:59997-14-7の5-デアザフラビンです。
先述の通り、5-デアザフラビンとは、5-デアザフラビンの骨格を有する化合物の総称です。CAS:59997-14-7の5-デアザフラビンの5-デアザフラビンも、5-デアザフラビンに別の化合物が結合した、云わば、5-デアザフラビン誘導体です。
こういった5-デアザフラビン誘導体は、5-デアザフラビンとしての表記も可能だと思われますが、より正しくは、5-デアザフラビン誘導体としての表記でしょう。そして、さらに正確なのは、エチルメチルピリミドキノリンジオンという化粧品成分名称でも登録されている物質名でしょう。
一方、現段階で、弊社が供給している5-デアザフラビン商品は、物質名や5-デアザフラビン誘導体ではなく、全て5-デアザフラビンとして原材料表記されています。
この原材料表記や広告クリエイティブ上の表現については、あくまで、販売者さまの方針にお任せしております。
詳細は、OEM営業担当にご相談くださいませ。
引用文献
笠井 佐夫:5-デアザフラビン ビタミン 1998;72(7): 329-330
Effects of TND1128 (a 5-deazaflavin derivative), with self-redox ability, as a mitochondria activator on the mouse brain slice and its comparison with β-NMN J Pharmacol Sci. 2023;151(2):93-109.
The novel mitochondria activator, 10-ethyl-3-methylpyrimido[4,5-b]quinoline-2,4(3H,10H)-dione (TND1128), promotes the development of hippocampal neuronal morphology Biochem Biophys Res Commun. 2021 Jun 30;560:146-151. PMID: 33989906