5-デアザフラビン


5-デアザフラビン(5-Deazaflavins)は、ビタミンB2のリボフラビンによく似た構造を持ち、サーチュイン(長寿遺伝子)を活性化させる補酵素として注目が高まっているNAD+の様物質です。

※NAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド):ミトコンドリアでのエネルギー産生反応の補因子の1つ。NMNは、NAD+の前駆体。


5-デアザとは5番目の窒素を炭素に置き換えてアザ基を取り除いたものを意味します。
5-デアザフラビンとは、フラビンにおけるイソアロキサジン環の5位の窒素を炭素に置き換えてアザ基を取り除いたものを指す総称です。

複数の5-デアザフラビンが存在し、近年は、機能性を高めた誘導体も出てきています。一方、どの5-デアザフラビンも一緒くたに5-デアザフラビンと原材料表記がされている現状があります。既存で最も露出が大きい5-デアザフラビンは、TND1128(CAS:26908-38-3)という5-デアザフラビン(正確には5-デアザフラビン誘導体)であろうと推測されます。

詳細については、5-デアザフラビンの定義と共に、代表的な5-デアザフラビンの構造式を示した以下の資料をご参照くださいませ。

5-デアザフラビンについて

上記の資料では、リボフラビンや5-デアザリボフラビンの構造も示しています。違いは、5位が窒素か炭素かの違いだけなのがわかります。

5-デアザフラビンの機能性・安全性

笠井の報告(1998年)において、5-デアザフラビンは、構造式はビタミンB2骨格でありながら、実際の機能はビタミンB3骨格系統のNAD+やNADP+と同じと考えるのが妥当でであると述べられています。
一方、5-デアザフラビンの有効性データは少なく、未だヒトにおけるヒト臨床試験データなどは報告されていません。

また、様々な5-デアザフラビンで機能性の研究が進められているが、試験管試験や動物試験が中心となっている。近年、5-デアザフラビン誘導体であるTND1128が注目され、ミトコンドリア活性作用などが注目されています。

なお、市場で行われているNMNの40倍というクリエイティブ表現も、TND1128とNMNにおける比較試験結果に基づくものと推測され、全ての5-デアザフラビンでは謳える表現ではないと考えられる。

機能性の検証が行われている5-デアザフラビンは、TND1128とF420(メタン発酵の酸化還元反応に関わる補酵素)だけであり、他の5-デアザフラビンは、弊社の文献調査において、機能性の報告も行われていません。

次に、どの5-デアザフラビンに関しても、弊社の文献調査の範囲内で安全性のデータは、確認されません。安全性データについては、TND1128で社内データとして存在するようですが、その他の5-デアザフラビンでは、現時点において、存在しません。(2023年7月25日修正)

また、5-デアザフラビンは、食薬区分において非医薬品リストに載っておりません。TND1128も審議対象にはなっておりますが、判断されていません。現時点において、製造に合成工程があることなどから、未承認添加物に該当する可能性もございます。安全性データがない点や市場での流通実績の少ない点を加味すると、おそらく、非医薬品リストに掲載されるのは、かなり先だと予測されます。

ちなみに、仮にTND1128が非医薬品リストに収載された場合、他の5-デアザフラビンも同時に、非医薬品扱いになる訳ではございません。その点は、注意が必要です。

ご支給ならびに供給について

要望が多いため、弊社でも、OEM向け限定で5-デアザフラビンを調達しております。原料をご支給いただく際も含め、5-デアザフラビンを配当したサプリメントに関しては、食薬区分の観点から、お客さま責任(承諾書のご提出が必須)で流通していただくことになります。
※原料販売は行っておらず、OEM限定の供給とさせていただいております。また、仕入れ先の情報提供(秘密保持契約の関係上)も提供しておりません。 ※弊社は、仕入れ原料として取り扱っているだけで、原料の輸入販売は行っておりません。
ご理解の程、何卒よろしくお願い申し上げます。

なお、弊社において、CAS:26908-38-3の取り扱いは、行っておりません。
弊社では、CAS:59997-14-7の取り扱いも開始いたしました(OEMのみ)。
(赤字部分を2023年9月22日修正)

なお、TND1128という名称に関しては、引用文献から引用して(10-ethyl-3-methylpyrimido[4,5-b]quinoline-2,4(3H,10H)-dioneの通称名として)利用しております。現在、商標が出願されておりますが、弊社の見解として、2021年Katsurabayashiらの論文でTND1128という名称が記述されて公知になって、数多くのサイトでTND1128が利用されております。そのため、商標は、CAS:59997-14の5-デアザフラビンに限定しても取得できないものと考えております。
一方、仮に取得され場合、TND1128の表現を見直し、CAS:59997-14の表現をメインに利用していく予定です。

引用文献


笠井 佐夫:5-デアザフラビン ビタミン 1998;72(7): 329-330
Effects of TND1128 (a 5-deazaflavin derivative), with self-redox ability, as a mitochondria activator on the mouse brain slice and its comparison with β-NMN J Pharmacol Sci. 2023;151(2):93-109.
The novel mitochondria activator, 10-ethyl-3-methylpyrimido[4,5-b]quinoline-2,4(3H,10H)-dione (TND1128), promotes the development of hippocampal neuronal morphology Biochem Biophys Res Commun. 2021 Jun 30;560:146-151. PMID: 33989906

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NMNと5-デアザフラビンの違い

NMNは、2015年頃より、一部の販路(クリニック販路など)から日本市場に流通し始めました。先駆者であるミライラボバイオサイエンス(旧 新興和トレーディング)は、2015年4月からNMN商品を販売しております。米国において、2016年、NMNは、ChromaDex社によってGRAS認証を取得していました。
また、ブームの火付けとなった帝人のNMN商品が販売され始めた2019年5月16日の時点では、食薬区分リストに収載されていないながらも、54日間の反復毒性試験まで実施された安全性が証明された中国産原料が流通していました。そして、2020年以降、NMNは、安全性や有効性の報告も行われ始めています。のその後、NMNは、2020年3月に食薬区分リストに掲載されました。

現在、5-デアザフラビンも、NMNと似たような形で流通は始まりつつあります。今後、機能性や安全性のデータも、徐々に示されていくことが予測されます。
また、特許の穴を見つけて、中国産5-デアザフラビン原料も流通することが予測されます。

一方、5-デアザフラビンは総称であり、様々な5-デアザフラビンが存在します。NMNとの大きな違いの1つです。
現在、研究が進められている5-デアザフラビンであるTND1128とは異なる構造の5-デアザフラビンが安価に流通してしまう可能性があります。原材料表記名は、どちらの5-デアザフラビン原料も5-デアザフラビンであり、消費者は、その大きな構造の違いを理解できないでしょう。
そのため、荒れた市場になることが懸念されます。

また、現在、米国において、NMNは、認証を取り消され、サプリメントとして流通できないような状況が生じています。これは、中国からの輸入を制限する米国の対中政策の一環だとも予測されます。
同時に、中国市場は、内製化の政策がかなり進み始め、NMNのようなサプリメント輸出も今まで以上に厳しくなると予測されます。
取り巻く情勢が全く異なります。
こういった状況下、NMNのように、中国産TND1128を用いた商品で一儲けしようと原料開発を行う中国企業が現れるのか?と疑問も残ります。

最後に、NMNはワシントン大学や慶應義塾大学が中心となって研究が薦められ、かなりアカデミックに研究が行われました。
5-デアザフラビンとしては、そこそこ有名大学が研究されていますが、TND1128は、それほど有名大学が手掛けていない状況があります。
これは、研究に携わったことにしか理解しにくいかもしれませんが、アカデミック度の違いを感じざる負えません。

上記のような点を考慮し、5-デアザフラビン市場の成長を先読みしてく必要があるのです。
場合によっては、早期勝負で、勝ち逃げするくらいの気持ちで。


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記事筆者

株式会社アンチエイジング・プロ 常務取締役 COO
SloIron Inc. 取締役(Stockholder)、順天堂大学医学部 総合診療科 研究員

広告にも精通し、日々、売れる商品(;顧客の成功)のことを考え、健康食品サプリメントの機能性原料開発やOME製造を行っています。…もっと詳しく