フェリチン鉄とプロバイオティクス

鉄と腸内環境

鉄は、腸管にて吸収が行われるため、腸の状態(腸内環境)によって、吸収が低下が起こり得ます。
例えば、炎症性腸疾患の患者の多くが、腸管粘膜からの慢性的な出血と鉄吸収の低下、炎症による鉄利用の障害が主な原因で貧血を伴っている可能性があるという報告も行われています。

また、二価の鉄は、ラジカルを発生する可能性もあり、二価の鉄が用いられていることが多い経口鉄剤は、胸やけや吐き気、腹痛、便秘、軟便などの副作用が起こる得ることが知られています。
そのため、医療現場では、腸に炎症がある患者には、経口鉄剤の投与ではなく注射薬の鉄剤を選定されることもあります。

6万部突破の人気書籍:マンガでわかる 食べてうつぬけ 鉄欠乏女子救出ガイド(奥平智之著)でも、大腸炎症性の鉄欠乏が紹介され、発酵食品の摂取などが推奨されています。

実は、鉄と腸内環境の関係は、非常に密接だったりするのです。

フェリチン鉄は、たんぱく質に内包され、ラジカルが発生しにくい構造の生体鉄ですが、他の鉄と同様、腸内環境が悪ければ、吸収の低下が起こり得ます。

なお、鉄の吸収を高めるには、一般的に、ビタミンC・動物性たんぱく質・クエン酸やリンゴ酸などの果実酸も一緒に摂取すること推奨されています。
一方、フェリチン鉄の場合、吸収機構が異なり、三価の鉄のまま吸収されるため、吸収率への変化はないと考えられます。

ただし、腸内環境を整えるプロバイオティクス(乳酸菌・ビフィズス菌など)やプレバイオティクス(オリゴ糖、イヌリン、食物繊維など)と一緒に摂取した方が吸収率に良い影響がもたらされる可能性が高いでしょう。

プロバイオティクスと鉄の吸収



そして、腸内環境を改善し、様々な有効性が期待できるプロバイオティクスの中には、鉄の吸収を改善/促進する報告が行われているものも存在します。
乳酸菌299v株のような生菌の乳酸菌だけでなく、乳酸菌H61株のように殺菌乳酸菌でも、血清鉄やフェリチンの改善が認められています。

鉄を摂取する場合、プロバイオティクスやプレバイオティクスのような腸内環境を改善する素材と共に摂取することもオススメです。

なお、乳酸菌299v株の試験では、フマル酸鉄も20mgを1粒で摂取させている関係上、被験者の脱落もかなり認められています。プロバイオティクスでは、鉄剤の副作用まで低減できないようです。

引用文献


European consensus on the diagnosis and management of iron deficiency and anaemia in inflammatory bowel diseases. J Crohns Colitis. 2015;9(3):211-22.
The Effect of Lactobacillus plantarum 299v on Iron Status and Physical Performance in Female Iron-Deficient Athletes: A Randomized Controlled Trial. Nutrients. 2020; 12(5): 1279.
Heat-Killed Lactococcus lactis subsp. cremoris H61 Altered the Iron Status of Young Women: A Randomized, Double-Blinded, Placebo-Controlled, Parallel-Group Comparative Study. Nutrients. 2022;14(15):3144.

売れ筋 鉄サプリの特徴


まず、鉄という商材は、1日あたり鉄10gm(栄養機能食品の上限量)の商品が圧倒的に市場を席巻しております。
ヒット商品の中には、1日あたり鉄18gm(ピロリン酸鉄として)と高用量の商品も存在します。

理由は、日本の鉄の摂取基準にあると思われます。海外では、成人女性の鉄摂取量は、北米を中心に1日あたり18mgの国が多いです。
この摂取量の違いが日本人女性で貧血や隠れ貧血の方が多い理由だと思われます。

そして、この10mgの摂取基準をベースにしても、日本人女性は、平均4.1mgの鉄が不足していることがわかっており、北米基準では、約12mgの鉄が不足していることになります。

実際、まめ鉄のヒト臨床試験でも、1日あたり鉄5mgより鉄10mgの方が好ましい結果が示されており、1日あたり鉄5mgの摂取では、月経後の鉄の回復が追い付かない傾向も示されております。

本来、日本人女性は、食事以外に、良質な鉄で1日あたり10mg補った方が好ましいのかもしれません。

おそらく、こういった摂取状況/不足状況は、1日あたり鉄10gmの商品が消費者から支持される理由となっているのでしょう。

また、消費者ニーズには、1日あたり鉄10mgだけでなく、吸収の良い鉄というニーズもあるでしょう。

今後、葉酸やビタミンB12という造血に関わるビタミンだけでなく、腸内環境を良くすることで鉄の吸収を高め、体感の高い商品の方が指示されるのかもしれません。


記事筆者

株式会社アンチエイジング・プロ 常務取締役 COO
SloIron Inc. 取締役(Stockholder)、順天堂大学医学部 総合診療科 研究員

広告にも精通し、日々、売れる商品(;顧客の成功)のことを考え、健康食品サプリメントの機能性原料開発やOME製造を行っています。…もっと詳しく