鉄摂取目安量と女性向け鉄サプリメント設計

女性の多くが鉄不足!

鉄の摂取目安量の特徴は、摂取量が月経の有無で変化するだけではなく、妊娠期によって付加量も定められているため、明らかに性差(男女差)がある点です。

出典:日本人の食事摂取基準(2015 年版)

そのため、男女の平均値では、あまり不足していないように見えがちな栄養素ですが、女性(月経あり)や妊婦に限定すれば、不足しているケースが非常に多い栄養素です。

この不足量に関しては、推奨量から栄養摂取の調査結果を引けば算出が可能です。

平成29年国民健康・栄養調査によると、20-29歳と30-39歳の女性の鉄の摂取量は6.4mgです。そして、その年代の月経ありの女性の鉄の推奨量は10.5mgです。

したがって、平均して4.1mg、推奨量より不足していることがわかるのです。

また、妊娠期中期・後期なんて、21~21.5mg(月経なし:6~6.5mg+付加量:15mg)も必要になるので、14.6~15.1mgも不足することになります。
妊婦さんの多くが鉄不足を感じる理由です。

鉄不足の症状として、疲れやすい、めまい、たちくらみをよく起こすというものがよく知られています。また、身体に出る症状として、顔色が悪いや爪が弱くなったというものもあります。
その他、酸素運搬に重要な役割を担うヘモグロビンの産生が滞るため、すぐに息が切れるなどの症状も出ることがあります。女子アスリートは、そういった鉄不足の症状がパフォーマンス低下を引き起こすため、鉄不足により一層の注意が必要になってきます。

米国における鉄の摂取目安量

米国における成人女性(19~50歳)の鉄摂取目安量は、18mg(妊婦:27mg、授乳婦:9mg)となっており、日本の基準より多いです。
OTC医薬品の鉄剤の量である10mgを大きく超えてしまいます。
また、この18mgという量は、食品だけではなかなか補いきれない量です。米国では、それだけ鉄が必要と考えているのでしょう。

日本の鉄サプリメントでは、10mg/日設計の商品が多く、OTC医薬品の量なども参考にされていると考えられます。
米国の摂取基準から考えると、この10mgという量は、決して多くないことがわかります。

引用文献

日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会 報告書:微量ミネラル 鉄(Fe)
清涼飲料水評価書:鉄 食品安全委員会 2017年
平成29年国民健康・栄養調査
Institute of Medicine.Food and Nutrition Board.Dietary Reference Intakes for Vitamin A, Vitamin K, Arsenic, Boron, Chromium, Copper, Iodine, Iron, Manganese, Molybdenum, Nickel, Silicon, Vanadium, and Zinc : a Report of the Panel on Micronutrient. Washington, DC:National Academy Press; 2001.

サプリメントによる鉄の補充量

鉄不足を解消するため、女性向けのサプリメントに鉄が配合されるケースは多々あります。また、鉄不足によって顔色が悪かったり、爪が弱くなったりすると、美容にも悪影響が生じるため、美容サプリにも鉄を配合するケースも多いです。

鉄補充を目的とした女性向けサプリメントに鉄を配合する場合、以下の配合量がオススメです。

妊婦以外の女性:4~10mg
妊婦:10~15mg

鉄の注意点として、過剰症と副作用です。
よく知られる鉄の副作用は、胸焼けや便秘です。特に、2価の鉄は、強力なフリーラジカルであるため、副作用を引き起こしやすいです。

鉄は、フリーラジカルでもあるため、摂り過ぎに注意が必要です。また、フリーラジカルの害ができるだけ少ない素材を選択することも重要です。
特に、妊婦は、必要量が多いだけでなく、便秘薬なども使用にくいため、良質な鉄を選ぶ必要があります。

引用文献

高後 裕, 大竹 孝明:鉄代謝の生体に及ぼす影響 外科と代謝・栄養 2015; 49(2) 59-65.
大竹 孝明, 生田 克哉, 高後 裕:鉄と発癌 日本内科学会雑誌 2010; 99(6) 1277-1281.

食品に利用できる鉄素材

鉄の供給源としては、クエン酸鉄やピロリン酸鉄のような無機塩、ヘム鉄、フェリチン鉄などが存在します。ニーズに合わせて、鉄素材を選定する必要があります。
それぞれの特徴を以下のようにまとめました。

素材 吸収機構 特徴
無機鉄(鉄塩)
ピロリン酸鉄・クエン酸鉄など
金属イオントランスポーター(DMT1) ビタミンCなどの還元剤によって3価の鉄が2価の鉄に還元されて吸収される。そのため、還元されなかった鉄は、吸収されず、フリーラジカル源として鉄特有の副作用をもたらすこともある。また、亜鉛や銅などと拮抗し合い、吸収阻害が起こる場合もある。コスト的に最も安価。
非ヘム鉄として無機鉄は、一般的に吸収が悪いとされているが、それは、食品中における無機鉄であり、添加物製剤の場合、必ずしも非ヘム鉄より吸収が劣るとは限らない。鉄が不足して場合、無機鉄でもヘム鉄と変わらない吸収性が示されている報告もなされている。
ヘム鉄 不明 一般的に吸収率が良いとされている。一方、無機鉄(鉄塩)と異なり、鉄が充足していても吸収され続けてしまう過剰リスクも有する。なお、ヘム鉄製剤は、加工法によっても吸収性に差が生じるとも報告されている。
ヘム鉄の由来は、豚・牛の血液であり、ハラルやベジタリアン、(ホルモンの残留により)アスリートが利用できないこともある。
フェリチン鉄
まめ鉄
エンドサイトーシス 医薬品に用いられる硫酸鉄と同等の吸収率や生物学的利用能が報告されている。そのため、海外では高吸収が謳われている。鉄がタンパク質(アポフェリチン)に包まれた高分子のまま吸収されると考えられており、フリーラジカルの害も少ないと考えられている。また、タンパク質に包まれていないナノコア鉄も、エンドサイトーシスで吸収されることが報告されており、アポフェリチンが分解しても同様な吸収特性が期待される。
近年は、原料レベルでは、製造工程で生じた鉄イオンや消化により分解して生じた鉄イオンも確認されており、その鉄イオンは、DMT1で吸収されることもわかっています。



近年、ヴィーガンの増加やオーガニック志向の高まりにより、原料にこだわったナチュラル志向の商品も数多く作られるようになりました。ナチュラル志向の商品には、主にオーガニック豆由来のフェリチン鉄が用いられます。
ヘム鉄やフェリチン鉄は、鉄1%あたり1万円程度のコストですが、無機鉄の素材は、鉄1%あたり数百円程度と非常に安価です。その差を加味して、マーケティングならびに商品開発を行う必要があります。

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記事筆者

アンチエイジング・プロ
株式会社アンチエイジング・プロ 常務取締役 COO/順天堂大学医学部 総合診療科 研究員

広告にも精通し、日々、売れる商品(;顧客の成功)のことを考え、健康食品サプリメントの機能性原料開発やOME製造を行っています。…もっと詳しく