還元型NMN:NMNH
今、米国では、還元型のNMN(モノニコチンアミドモノヌクレオチド)であるNMNH(ジヒドロニコチンアミドモノヌクレオチド)が流通し始め、注目度が高まっている成分です。米国では、反復毒性試験などを用いてセルフ認証GRASも出されています。
NMNHの特徴は、NMNに比べて高い生物学的利用能であり、NMNよりも細胞内のNAD +レベルをはるかに大幅に増加される点です。実際、Zapata-Pérezら(2021年)の研究では、NMNHはNMNに必要な濃度の10分の1の濃度(5 µM)でNAD +を大幅に増加させることができたと報告されています。また、マウスにNMNHを投与すると、肝臓、腎臓、筋肉、脳、褐色脂肪組織、心臓のNAD+濃度も上昇することが報告されています。
Liuらも(2021年)も同様な報告を行っており、ニコチンアミドモノヌクレオチドアデニリルトランスフェラーゼ(NMNAT)を介して、NMNは酸化型のニコチンアミドジヌクレオチドであるNAD+に変換され、NMNHは還元型ニコチンアミドジヌクレオチドであるNADHに変換されると報告しています。また、NMNHは、酸化されてNMNにも変換されているだろうと考察し、NMNよりNMNHの方がNAD+を顕著に増加させると述べられています。
これらの研究結果より、より有用性の高いNMNサプリメントが市場流通し始めるでしょう。また、NMNHは、今後、NAD+のブースターとして、NMNと同様なヒト臨床試験(安全性・有効性)の報告が行われていくものと予測されます。
なお、学術論文として報告まで行われていませんが、すでにヒト臨床試験が完了したとう原料も存在します。
引用文献:
Reduced nicotinamide mononucleotide is a new and potent NAD+ precursor in mammalian cells and mice. FASEB J. 2021;35(4):e21456.
Reduced Nicotinamide Mononucleotide (NMNH) Potently Enhances NAD+ and Suppresses Glycolysis, the TCA Cycle, and Cell Growth. J Proteome Res. 2021;20(5):2596-2606.
日本での流通や食薬区分
NMNHは、還元型コエンザイムQ10もしくはN-アセチルグルコサミンの位置付けで流通するものと予測されます。
還元型コエンザイムQ10は、コエンザイムQ10の食薬区分を利用して、流通しております。これは、還元型コエンザイムQ10に限らず、L-カルニチンの食薬区分を利用しているカルニチンフマル酸塩・酒石酸塩も当てはまります。ただし、カルニチン塩酸塩のように、医薬品で用いられている成分は除外されます。
一方で、グルコサミンのアセチル体であるN-アセチルグルコサミンは、別途、その他の化学成分として食薬区分に登録されています。一方、N-アセチルグルコサミンは、食薬区分に入る前も、市場では流通していました。
厚生労働省や検疫所は、どのような判断を行うか?まで推測できませんが、しばらく曖昧な状況で流通することが予測されます。
なお、米国での状況から判断すると、もう少し流通実績が付いた段階で、食品としての認可が得られるとも予測されます。それまでに、さらに安全性データが積み重ねられ、流通実績などから日本でもNMNHとして食品としての食薬区分に位置付けられるものと考えられます。
ちなみに、セルフ認証GRASのNMNHは、NMNH遊離体ですが、米国で流通する商品のNMNH原料は、ナトリウム塩であるDihydronicotinamide Mononucleotide Disodium Saltです。NMNHの遊離体は、安定性が高くないのでしょう。したがって、食薬区分として食品リストに収載される場合、NMNHナトリウム塩としての可能性が高いでしょう。
※現在、調査を行いながら、対応指針を決めております。原則、過去のNMN同様、食薬区分での位置付けが明確になるまで、何らかの承諾書をいただいた上で、対応させていただく予定です。
相性の良い素材
エルゴチオネイン
アスタキサンチン
ルテイン
のような長寿ビタミンと呼ばれる成分。アスタキサンチンやルテインは、反応性を加味して、マイクロカプセル化された原料やビーズ原料が好ましいでしょう。
NMNH vs 5-デアザフラビン
現在、ポストNMNとして、5-デアザフラビンに加えて、NMNHも浮上してきた段階です。
NMNは、近年、ヒト臨床試験データも蓄積し、機能性表示食品の機能性関与成分としても利用されています。
NMNHのヒト臨床試験データも積み重ねられると予測されますが、NMNのヒト臨床試験データもかなり利用できるものと考えられます。
一方、5-デアザフラビンは、研究成果がそれほど出てきておりません。日本でしか流通実績がなく、市場の拡大も低迷しています。
今後、NMNHの方が、ポストNMNとして、非常で広く流通する可能性が高いでしょう。